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当院の治療

理事長挨拶

寺元院長 医療法人永遠幸の治療理念を統括管理する理事長の寺元です。当法人は前加藤レディスクリニック院長、加藤修氏(故人)と寺元の、「成功なくして報酬なし」という共通の理念の基に2007年に開設しました。 しかしながら同時に、「不妊治療とは妊娠できる卵巣機能を有した人から、その可能性の全てを過不足ない投薬により引き出す」という一見現実的な従来の方針も残していました。 つまり卵胞の均質化を目的としたピルによる月経周期の調整、クロミフェンによる早発排卵の抑制、そしてFSH製剤による適度な刺激を治療の柱とし、これが可能な人に成功報酬を適用するという条件を設けていたのです。 この方法は卵巣機能が高い人ほど有効でしたが、低くなるにつれて負担が大きくなり、時に治療の反動により投薬後に排卵周期が乱れ、FSHが上昇してしまうこともありました。 その頃、卵巣機能を知る方法として抗ミューラー管ホルモン(AMH)の検査が利用できるようになり、やがてAMHが低いほど治療反動が大きくなることが明らかとなりました。 すなわち、実に90%の人が反動予備軍で、60%は反動必発群であることが判ったのです。つまり従来の治療は低刺激であるにもかかわらず、過半の方において却って卵巣機能を傷害する可能性があるということなのです。 当法人の低刺激法は最も体に優しいと考えていましたから、予想が確信に変わったとき、希望を実現する治療が希望の灯を消してしまうかもしれないということに大きな落胆を覚えました。 そこで設立3年目に治療方針を全面的に変更しました。 それが、ピルを使わない、刺激を行わない治療であり、その時全ての刺激薬剤を放棄し、低刺激さえも許さない「無刺激治療」を開始しました。
そしてたどり着いた今の当法人の理念は、「成功なくして報酬なし、薬剤なくして成功あり」なのです。

Natural ART Clinic 日本橋
の体外受精

良好な卵子を得るためには、卵子が卵巣の中で成熟していく過程を重視しなければなりません。 その期間は非常に長く、原始卵胞からでは1年近くになりますが、最後の数か月間はFSHなどの下垂体ホルモンの影響を強く受けます。 そこで、この間の卵子の成熟が乱されないように、私たちは自然周期を治療の原則としています。 仮に薬を用いなければならないとしても、種類を選び、できるだけ少量に抑え、自然状態では体内に存在しないホルモン類や過剰なホルモン類、 特にHCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)に関連した製剤は使用しないようにしています。 自然に近い状態で成長と排卵を促すことが、今成長し排卵する「現在の卵子」だけではなく、翌周期以降に排卵する「未来の卵子」に重要なことだと考えているからです。 このような考えに基づいた独自の治療法を以下に紹介します。

完全自然周期

自然周期の来院日程タッチで図を拡大

当院の治療の基本になります。排卵に至る過程は一人ひとり異なります。 卵胞の成長速度、女性ホルモン(E2)の増加の仕方、排卵に至るタイミングなど皆さん固有の「くせ」があります。 また過去にホルモン剤の投与を受けている方は本来の状態から逸脱し、正常な排卵過程に至らないこともあります。 自然周期はこの「くせ」や「逸脱の程度」を知るために重要です。
卵巣の能力は年齢と伴に低下します。それは止むを得ませんが、低下した状態に強い作用の薬剤、ピルや多量の卵巣刺激剤を投与するのは控えるべきだと私たちは考えています。 一層の低下を招き、自然の回復力が及ばなくなる危険があるからです。自然周期はこの卵巣の能力を正確に評価するためにも重要です。しかし、なにより重要なのは、自然周期こそ優良な卵子を自然が選んでくれる周期なのだということです。自然周期で選ばれた主席卵胞には、年齢によらず、その周期の最良の卵子がねむっていて、あなたを待っているのです。卵巣の能力が低下しても、赤ちゃんになれる卵子は必ず残っているのですから。
生理3日目は診察の基本です。卵胞(卵子を入れている袋;生理3日目で径約5mm)数、FSH、AMH(抗ミューラー管ホルモン;卵胞数のホルモン的指標)、の計測など、その周期の基本情報を確認します。自然周期では薬剤は全く使わず卵胞の成長を見守ります。 2回目診察は原則的に生理10日目です(ただし当院で過去に10日目以前の排卵歴がある場合は、8または9日目の指定もあります)。 早い人はこの時点で採卵日が確定しますが、通常はこの時の所見を基に3回目の診察日を決めます。 数回の診察の後、女性ホルモン(E2)値と主席卵胞の大きさが最適になったら、採卵日を決定します。通常はE2が250程度に達すると採卵の準備に入ります。 排卵させる脳ホルモン(LH:黄体化ホルモン)が上昇していない場合は、GnRHアゴニスト(ブセレキュアなどは商品名)という点鼻薬を用いて人工的に上昇させ、2日後の午前中に採卵します(予定採卵)。 LHが予想より早く上昇してしまった場合には一時的にLHの上昇を抑制したりLHの作用を打ち消したりする投薬をして2日後に採卵を行うこともあります(抑制採卵)。 しかしそれが不可能な場合は、自然の成り行きに従って、当日または翌日の排卵直前に採卵します(緊急採卵)。卵子が採れて、採卵後5日目に基準を満たす胚盤胞に育った場合は、子宮内膜と黄体機能に問題がなければ凍結することなく新鮮胚で移植します。しかし、発育が遅い場合や内膜、黄体機能に異常がある場合は一端凍結保存し、翌周期に融解して移植することになります。
※当院の初回体外受精では、無排卵周期や重度月経不順の方を除いて全ての方に、成功報酬制度に基づく自然周期採卵を行っています(ただし指定日の指定時間帯来院が条件となります)。


クォータークロミフェン(qC)周期

qC周期の来院日程タッチで図を拡大 排卵直前の状態で採取された卵子は最も成熟率が高く、また卵子の回収率も高くなります。自然が選択した卵子を自然が放出する直前に「いただく」ことが自然周期の醍醐味であり、意義はそこにあります。 従って、自然周期ではLHが上昇(LHサージと言います)し始める兆候を的確にとらえ、排卵時間を正確に予想し、排卵直前に卵子を採取することが重要となります。 しかし毎日診察しても24時間の空白が存在し、時間単位ときに分単位で変化するLHサージの兆候を見逃すことがあります。今日はまだ早い、しかし明日はもう遅いということが常に起こり得るのです。 その際緊急採卵を行うことになりますが、診療時間の制約から最良のタイミングとならないこともあり、その場合の卵子の回収率と成熟率は予定採卵および抑制採卵に比べて低くなります。
そこで一般の体外受精では薬剤でLHサージの開始を抑制し、このような事態(予想外の排卵)が起こらないようにします。 その薬剤には性腺刺激ホルモン(FSHとLH)放出ホルモンのアゴニスト(競合作動薬)とアンタゴニスト(競合拮抗薬)の2種類があり、代表的製剤名は前者がブセレキュア、後者がセトロタイドまたはガニレストになります。 これらの薬剤を使用した周期はショート、ロング、またはアンタゴニスト周期と呼ばれ、下垂体からの脳ホルモン(FSHとLH)の分泌を強力に抑制して排卵を停止させると同時に卵胞の成長も停止させてしまうという点で共通しています。 その結果いずれの方法でも、卵胞を成長させる大量の薬剤(FSHまたHMG)を注射によって補充せざるを得なくなり、また排卵を促すためにHCGを打たざるを得なくなります。
このような方法(調節刺激周期と総称します)に対して当院では、違った方法でLHサージの開始を抑制しています。 それがクロミフェン周期です。クロミフェンはE2アンタゴニストと呼ばれ、下垂体より上位の視床下部においてE2に拮抗し、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌を促進しないようにします。 この結果排卵を起こすLHの増加は起きなくなります。 クロミフェンの作用は脳にLHサージの開始を一時的に失念させるだけであり、ブセレキュアなどの投与で失念を解除し、LHサージを容易に思い起こさせることができる点で従来の方法と異なります。 またFSHは抑制されないので卵胞の成長は維持され、卵胞成長を促進する薬剤(FSHまたはHMG製剤)を投与する必要がありません。 多くの利点を有するクロミフェン周期ですが、卵胞の成長が持続することにより中小の卵胞が発生することにより、時に卵胞遺残という問題を引き起こすことがあります。 これは次の周期の月経開始時点で卵胞が大きくなっておりE2値が既に上昇しているという異常で、一旦この状態になると元に戻すのに苦労します。
そこで当院ではクロミフェンの利点だけを取り出す方法を追求し微量のクロミフェンを短期間使用するqC周期にたどり着きました。それは月経6日目からクロミフェンを4分の1錠(12.5㎎)連日服用する方法です。 この用法(通常の使用量(100㎎)の8分の1で3日遅い服用開始)では、LHサージの開始を効果的に抑える一方卵胞を刺激する作用はほとんどないという、自然周期に極めて近い状態を実現できるのです。 qC周期の診察日程は自然周期と同じですが、微量とはいえ投薬の影響を考慮し全て凍結胚移植になります。 このqC周期では自然周期と同様、1個の主席卵胞と小卵胞しか存在しません。中間サイズの卵胞が存在しないため全ての卵胞はその周期で寿命を終え、通常遺残卵胞が発生することはありません。 したがって例え失敗したとしても連続して翌周期で採卵することができ、また卵子の質が低下することもありません。
※2回目qC周期は成功報酬制度の対象です(ただし指定日の指定時間帯来院と服用指示の厳守が条件となります)。


成功報酬制度

初回完全自然周期と2回目qC周期は成功報酬制度の対象です。 成功報酬制度では不成功に帰した場合の料金は10万円以下に設定されています(料金制度の項を参照ください)。 成功報酬は、妊娠10週以上の継続妊娠を達成し、10週時の胎児長が30㎜以上、心拍数が160毎分以上で胎児に明らかな異常を認めず、当院を卒業され分娩施設に転院された時点で成立します。


フェマーラ・クォータークロミフェン(FqC)周期

FqC周期の来院日程タッチで図を拡大 2回目までに卒業できなかった場合、3回目以降はフェマーラ周期を行うことがあります。 フェマーラは卵胞での女性ホルモン産生を阻害します(女性ホルモン合成阻害剤)。 この結果卵胞のホルモン感受性が亢進し、少量のFSHでも発育を続けるようになります。 しかし、フェマーラ自身には卵巣刺激作用がありませんから、発育する卵胞数が増加することはありません。 この点は自然周期とほとんど同じです。異なる点は、FSHが低い人でも卵胞が発育し、排卵に至るということです。 特に小卵胞が多すぎるためにホルモンのバランスが崩れ、LHが高くFSHが低くなっている多のう胞性卵巣(PCO:単に卵胞数が多いだけで病態の診断条件を満たさない人で日本人に多い)または同症候群(PCOS:病態の診断条件を満たした人で欧米に多い)はその典型例です。
フェマーラ単独周期の欠点は、女性ホルモンの変化を予想しにくいために最良のタイミングでの採卵が難しいということです。 これに対して当院では、前述のqC法を併用するFqC周期によりLHサージの開始を防ぎ、最良の採卵タイミングを実現できるようにしています。
フェマーラのもう一つの欠点は、フェマーラが適応外処方であるということです。フェマーラは乳がんの治療薬として販売されています。 従って、胎児に対する影響は検討されていませんから、安全性に最大限配慮する必要があります。そこで当院では、フェマーラを使用した周期では胚を移植しません。 一端凍結保存したのち、フェマーラの影響がない、翌周期以降の自然周期に移植します。また内服量と内服期間の点からも安全性に配慮しています。 当院では、フェマーラの服用は生理3日目からの3日間のみです。この飲み方では、半減期的に生理12日以降にフェマーラが体内に残存することはないからです。 つまり排卵期の卵子は、フェマーラの影響を受けないということになります。このFqC周期でも1個の主席卵胞とその他多数の小卵胞しか存在しません。 したがって、自然周期、qC周期と同様に連続した周期でも採卵することができ、良好卵子が期待できます。
診察スケジュールは自然周期と同じです。通常、生理10日目が3回目の診察日です。女性ホルモンが250以上に達すれば、自然周期やqC周期の経験をもとに採卵日を決定します。
※3回目FqC周期は成功報酬制度の対象外です。

採卵・採精

採卵は卵巣内の卵胞を経膣的に穿刺し、内部の卵子を針で吸い出す操作です。採卵は腹腔内を針が貫通する手術に準ずる処置ですから、出血と感染の危険を伴います。 出血は卵巣内または周囲の動静脈を傷つけることにより起こります。当院ではカラードップラー超音波装置と先端加工を施した専用の細径針を用い、出血リスクを極限まで低下させています。 感染は汚染物を体内に持ち込むことにより起こります。 当院では独自の可変吸引圧針を用い汚染の原因となる卵胞洗浄液や針内リンス液を体内に持ち込まないようにしていますから、感染リスクも非常に低くなっています。 また当院独自の採卵針を使用するため無麻酔または局所麻酔での採卵が可能であり、採卵30~40分後には安静解除できるなど身体的負担が少ないのが特徴です。 一方、精子は採卵当日に採精室で採取した新鮮精子を使用するか、あるいは事前に凍結した精子を融解して使用するかのいずれかとなります。 無精子症の場合は精巣上体からの経皮針穿刺採取(PESA)または精巣からの手術的採取(TESE)を行います。 PESA精子は凍結保存に適しているので、採卵より前に採取し凍結保存します。TESE精子は新鮮で使う方がいいため事前に卵子を採取し凍結保存しておきます。 いずれも当院独自の方法ですので、来院時に詳しく説明することになります。

小卵胞からの採卵

完全自然周期における年齢別生産率(%)タッチで図を拡大 自然周期は多くの卵胞から1個の卵胞が選ばれ成長します。これを主席卵胞と呼びます。 若い治療経験のない女性では主席卵胞が最良卵子を有する卵胞であると言えるのですが、加齢により、また月経周期を乱すホルモン剤の影響によりこの秩序は乱れてきます。 また赤ちゃんになれる良好卵子は一つと決まっているわけでもありません。 たとえば右の卵巣に主席卵胞がある場合、左の卵巣に主席卵胞がないからといって良好卵子を有する卵胞がないとは言い切れないでしょう。 ただ育たなかっただけかもしれません。 加えて、体外受精を受ける多くの女性が30代後半から40代前半であり、ホルモン剤の投与により月経周期の乱れを自覚していることを考えると、自然周期の主席卵胞だけに頼っていては良好卵子にはなかなか出会えないことになります。
完全自然周期における主席と小卵胞からの採卵卵子の成績(%)タッチで図を拡大 しかし自然周期では主席卵胞が育ってしまうとそれ以外の成長しなかった卵胞(小卵胞と言います)は閉鎖し卵子も死んでしまうと考えられています。 そこで一般的な体外受精では、全ての卵胞を成長させるために、ショート、ロング、アンタゴニスト周期と呼ばれる方法で卵巣を強く刺激し、できるだけ多くの卵胞を成長させるようにしています。 このような方法は一見理に適っているように見えますが、成功するにはいくつかの条件が満たされることが必要になります。 即ち刺激に反応する卵胞がたくさんあることと揃って(同期して)発育すること、そしてその卵胞の中に良好卵子が含まれていることが前提になります。 しかしながら現実に体外受精を受ける多くの女性ではこのような理想的状態は期し難く、1回での成功率(生産率)は38歳で10%程度です。 そして最初の治療が失敗に帰した場合、想定外の投薬(負荷)が2回目以降の治療において以前と同じ環境を許してくれるかということが大きな問題になります。 自然への畏敬の念を忘れた時、その報復を受け続けてきた人類はいつも教訓を生かせずに今に至っています。 当院説明会はこの事実を理解していただくことを目的にしていますので、ここに書ききれない内容は足を運んでお聞きください。
完全自然周期における主席と小卵胞からの採卵卵子の成績(数)タッチで図を拡大 さて重要なのは、薬剤で刺激せず成長しなかった小さいままの卵胞の中に、赤ちゃんになれる正常な卵子が本当に残っていないのかということですが、この事実は残念ながら見向きもされずに今に至っています。 しかし当院では、このような成長しなかった小卵胞の中に正常な卵子が存在しないか検証してきました。 自然周期に真剣に取り組んできた私たちにこそ為しえる試みでした。その結果、成長しなかった小卵胞内にも多数正常な卵子が存在することを見出し、臨床的に大きな成果を上げている世界で唯一の施設となりました。 小卵胞の中には成熟卵子も未熟卵子もありますが、その中には確実に良好卵子が眠っていて、その数は主席卵胞からの卵子数を凌駕するくらいなのです(882対1136)。


小卵胞採卵を支えるクリニック独自の採卵針

私たちは1999年より採卵針の独自開発を開始し、現在は世界標準の採卵針(18-19ゲージ)に比べ、2分の1以下の細さの極細採卵針(23.5ゲージ)による採卵を行っています。 しかしこの細さでは、流速と取り回しの点から針として役に立ちませんから、2段テーパーという独自の技術を用いて太い針と同等の性能を確保しています。
デーパー針の可能性タッチで図を拡大

また針の先端部分の刃は特殊な方法で加工されており、組織へのダメージを最小限に抑えるように工夫されています。 この極細針では痛みや出血も軽度なため、不妊治療施設で一般的に行われている採卵のための全身麻酔は必要ありません。 また、身体に大きな負担をかけず通常数分間で採卵が完了するので、採卵後短時間(20分~40分)で安静を解除でき、日中に帰宅可能です。 この独自開発した針の大きな利点は、3ミリという非常に小さな卵胞まで穿刺可能だということです。 小卵胞は通常3~6mmの大きさですから、この針を使えば小卵胞からの卵子回収は、熟練した技術があれば極めて容易です。 この2段テーパー針は、自然周期やフェマーラ周期の小卵胞穿刺において非常に有用で、大小全ての卵胞から卵子を採取するという革新的技術により、若年者から高齢者まで、従来考えられなかった高い妊娠成功率が実現されています。

参考論文は「Fertility and SterilityR」のサイトからご覧いただけます。URL:http://www.fertstert.org/article/S0015-0282(16)30048-6/fulltext


男性不妊

精子の状態を詳細に解析すると、原因不明不妊の多くが男性不妊であることがわかります。また胚移植を何回行っても成功しない頻回失敗者の多くが重度男性不妊であることが解っています。 しかし男性不妊の病態は誤解されていることが多く、それはWHO基準の信奉によると思われます。 男性不妊の真の問題点はこのような評価法では判断できない精子の形態異常にあり、男性不妊ではないとされている多くの例が実は重度の男性不妊である可能性があるのです。 精子の異常はコンピューターによる高精度なビデオ画像解析と特殊染色像の画像解析により明らかになります。 当院では独自の機器と解析ソフトの開発により短時間で正確に精子異常を診断し、最良の媒精方法を決定しています。 また重度の男性不妊の人には直ちにホルモン検査と精巣触診を実施し、中枢性造精機能障害や精索静脈瘤などの異常がないか遅滞なく検索し、ART治療と同時進行的に男性不妊の改善治療を行っています。 良好卵子は重要ですが良好精子も同様に重要であり、卵子と精子を同列に扱うのが当院の治療信念です。


精巣上体、精巣精子回収法

射出精液中に精子が確認できない方のための治療法です。 閉塞性無精子症の場合は、精巣上体からの経皮的穿刺により数分で精子を回収できます(PESA法)。 PESA法で回収できない場合は、精巣から直接組織を採取し、精子を回収します。 この方法(TESE)には30分ほど要し、PESA法よりも侵襲量が大きくなります。 TESE法での回収が困難と予想されるような場合は、顕微鏡下に精子を採取する必要があります(MD-TESE)。 いずれの方法も当院で行っており、良好精子が1匹でも確認できれば顕微授精により受精させることが可能となります。

卵子老化に対する提言

最近卵子の老化という言葉を良く聞きます。年齢とともに、特に30代後半を境に急速に卵子の質が低下するというのですが本当でしょうか? 確かに年齢とともに原始卵胞数は減少し、排卵周期の発育可能な卵胞数も減少しますが、それと卵子の質の低下は別の問題です。 仮に卵子の質がある年齢を境に悪化するのなら、妊娠率はあるAMH値を境に急速に低下しなければなりません。 しかし当院の資料(採卵周期を基にしたAMH別妊娠率)では、妊娠率とAMHは直線的な比例関係にあるのです。 それは年齢に関係なく卵子数に応じた妊娠が期待できることを意味し、質の低下を意味しないのです。 高等動物であるヒトでは、もともと良好(=正常)卵子の比率は高くありません。 従って、卵子数が少なくなれば主席として選択される卵胞内に良好卵子がある可能性は低くなり、染色体異常の発生率も高くなります。 また卵胞数が減少すれば、様々なホルモンによる調整が上手くいかなくなり、良好卵胞の選択性を低下させます。 それは自然排卵に委ねて選ばれる主席卵胞の話であり、30代後半からの生産率が低下する原因となります。 しかし当院の体外受精では、選択された主席卵胞からも選択されなかった小卵胞からも、全てから卵子を採取してきます。

初回完全自然周期でのAMH別卒業率タッチで図を拡大

したがってどこかに良好卵子があれば、必ず見つけることができるのです。 大も小も全て採取するということは、言い換えれば低下した自然の選択性を補うということになります。 重要なのはこのような小卵胞卵子は決して自然には排卵されないことと、顕微授精以外の方法では受精しないということです。 つまり採卵・培養という人工的方法でのみ日の目を見、生命にまで育つことができるのです。 加齢による妊娠率の低下とは卵子数の減少が本質であり、卵子そのものが劣化してダメになってしまうということが重要なのではないのかもしれません。 このように考えると、自然の排卵周期がある間は、数は少なくても良好卵子は残されている可能性が十分にあると言えます。 その出会いは、毎周期とは行きませんからいい卵子に出会うには時間がかかるでしょうが、強い意志があれば、そして出会いを妨げることをしなければ必ず出会えるのです。 卵胞数が減少するということは脳のホルモンバランスを調整している卵胞からのホルモン(インヒビン)が減少することを意味します。 特にAMHが低下した高齢者ではこの影響は大きく、わずかな外部の干渉で卵胞供発育の連鎖(今周期、来周期、さ来周期…というように卵胞は周期毎にグループをつくって育ってきます)が乱されることになります。 ですから不用意な投薬はできるだけ、特に余力がない高齢者では極力慎む必要があります。 HCG、HMG、クロミフェン、ピルなど卵胞の発育を促進したり抑制したりする薬剤は卵胞発育の良い連鎖を乱し、翌周期の卵子の質と回収に影響するのです。 残念ながら刺激をしない自然状態では通常1個の卵胞しか育たず、たとえ最初に10個あっても9個は途中で無駄死にするから投薬をして全て育てなければならないと主張する人たちにとっては、このような議論は滑稽に映るでしょう。 しかし、もし仮に育った主席卵胞1個からも、育たなかった小卵胞9個からも同じように卵子が採れるとなれば、投薬をしない方が次の周期、その次の周期のことを考えれば良いのに決まっているのではないでしょうか? このような考えに基づき、私たちは新たな技術を考え、そして実現してきました。それが当院独自の自然周期でありqC周期です。 卵子老化という取りつく島のない宣告に対する私たちのメッセージは、既成概念や先入観の向こうにあるのです。

受精・培養

卵子と精子の準備ができたら受精です。通常は卵子に多数の精子を振りかけて受精させますが、体外受精は自然の受精と異なり、女性の体による精子の選択性が低下します。 自然では受精し得ない不良精子が、受精することもあるのです。従って精子異常率が高い人には、良好精子を人工的に選択して受精させる顕微授精のほうが受精卵の発育率を向上させてくれることもあります。 受精卵は通常2日間体外で培養して子宮に戻しますが、当院では必ず胚盤胞まで培養して戻しています。

顕微授精法(ICSI)

精子の数や形などに問題があり、受精率に限界がある方のための技術です。 採卵した卵子に1個の精子を針で直接注入し受精させます。当院では精子の形態異常率が高い場合には高倍率顕微鏡によるIMSIを積極的に行います。


胚盤胞培養(Blastocyst Culture)

受精卵を体外で通常より長い5日間から7日間培養し、着床前の胚盤胞まで培養します。胚盤胞培養の最大の利点は胚の発生能をより確実に評価できることにあります。 4細胞期胚1個当たりの着床率は20%に遠く及びませんが正確に評価された胚盤胞の着床率は50%以上に達します。 胚盤胞培養の利益を享受するには精度の高い観察技術と管理技術が不可欠ですが、当院では独自の継時的画像管理ソフト(ARTダイアリー)とICチップ標識により非常に高度な情報解析を可能にしています。 これらの総合的技術を背景にして医師と培養技師はリアルタイムで情報を共有し、患者様を含めた3者で同時に胚と精子の状態を評価できるのです。


卵子孵化補助(Assisted Hatching)

胚盤胞を移植する際、胚盤胞の周りの透明帯を除去する操作です。胚の着床率は胚盤胞を構成する最外殻の栄養膜細胞(TE)の数と形態に左右されます。 従ってTEの状態を正確に評価することは移植の可否と移植胚の選択において極めて重要ですが、透明帯はTEを観察するうえで大きな障害となります。 従って当院ではTE評価の正確性を期すために透明帯除去を積極的に行っています。

胚移植・凍結保存

体外で育てた受精卵を子宮に戻します。通常はカテーテルという細い管を用いて独自の経膣超音波誘導下で移植します。 稀に癌の治療などで子宮の入り口からカテーテルが入りにくい方がいますが、そのような場合は加藤修医師(前加藤レディスクリニック院長、故人)が考案し当院理事長と共に改良した経子宮筋層法(TOWAKOメソッド)で移植します。 当院ではこの2つの方法を使い分けて子宮の底部に確実に移植します。

移植に使用するカテーテル

私たちが独自に開発した細く柔らかいカテーテルを使用します。 一般的なカテーテルが6フレンチというサイズなのに対して当院では2フレンチのカテーテル(2分の1以下の太さ)を開発し、素材も従来のテフロンという堅いものからシリコンという非常に柔らかいものに変更しました。 操作性と柔らかさの間には相反する関係があり通常カテーテルには一定以上の堅さが要求されるのですが、これを独自の技術で解決しました。


単一胚移植(Single Embryo Transfer, SET)

開院以来当院では100%、1個の胚(受精卵)だけを子宮に戻す治療を行っています。 これは融解後胚盤胞の生存率が99%に達する高い凍結技術があって初めて可能となります。 一つ一つの技術を磨き、狂いなく積み上げていく地道な作業の集大成といえます。


子宮内膜異常の治療

内膜にポリープなどの異常があると胚が子宮に着床する障害になります。異常を発見した場合、できるだけ簡単で有効的な治療を胚移植前に行い、着床しやすい状態とします。 内膜異常の検査は独自に開発したカテーテルにより痛みもなく短時間で容易に行うことができます(超音波子宮造影法)。


黄体ホルモン補充周期胚移植

凍結胚移植の最大の利点は、最良の子宮内環境を選んで戻すことができるということです。 当院では子宮内膜の状態と着床に適したホルモン値を正確に評価することによって妊娠しやすい条件のときに胚移植を行ないます。


経膣超音波ガイド下胚移植法

当院理事長が経子宮筋層法に着想を得て独自に考案し、18年前に日本不妊学会(現日本生殖医学会)で発表した移植法です。 きわめて正確で、膀胱充満などの不快な前準備も不要な画期的な移植法です。


ガラス化保存法(Vitrification)

当院では内膜と胚の同調性を最適にするために積極的に胚盤胞の凍結保存を行っています。 独自の保存液を用いた凍結胚の融解後生存率は99%に達し、世界的水準をはるかに凌駕しています。


余剰胚凍結

当院では着床率を向上させるために凍結保存を行っていますが、一度の採卵で余剰胚が発生した場合を除き凍結保存胚を増やすことを目的にした治療は行っていません。 私たちは、生命の目的は種の保存であり、雌雄の形質を一体化した胚は生命と同等にみなすべきだと考えています。 したがって、母体に戻さないかもしれないという生命を増やすことは自然界の営みから逸脱し、生命科学技術の正当な利用とは言えなくなるでしょう。 例えば、移植胚があるにもかかわらず二人目のために採卵を続けるということは行っていません。第1子を当院治療で出産し、その後1年から3年の期間で第2子を希望して来院された方は2011年以降で444人おられました。
実測AMH値(年齢)と理論AMH値(年齢)から導かれる卵巣休止期間タッチで図を拡大 その方々の妊娠前後の卵巣機能の指標であるAMHを測定し解析したところ、予想通りというべきか予想外というべきか、卵巣年齢の低下は13.5か月分停止していました。 この事実は、妊娠中およびその後の月経開始までは原始卵胞の消費が全く進まない可能性が高いことを示しています。 実際妊娠中はAMHが極端に低下し、卵子の消費が停止していることがいくつかの論文で証明されています。多くの生物では生殖可能年齢と個体の寿命が一致しており、恐らくヒトもそうなのでしょう。 未開のころのヒトの寿命は最長でも50歳程度であったと推測されていますから、ヒトの生殖可能年齢つまり卵巣寿命はその程度(45~50歳程度)であり、5回以上の出産回数、即ち6年以上の卵巣機能停止期間があれば可能なことだと考えられます。種の保存を考えればネアンデルタール人辺りでは5回以上の出産が必要であり、恐らく自然は生物に全てを見越した上で様々な寿命を与えていることが伺えるのです。 従って一人目の妊娠出産に成功すれば、二人目治療を出産後1年程度で始めれば卵巣機能の低下を心配する必要は殆んどないと言えます。 ですから私たちは、二人目妊娠の心配をしないで、まずは一人目に全力を注ぐことを主張します。

当院の治療ポリシー

私たちの役割は、世界最高の技術水準で不妊に悩む方々の手助けをすることです。体外受精・胚移植の黎明期から30年余り経過し、関する様々な技術が開発されました。 特に顕微授精と凍結技術は画期的でした。しかしその賢明な利用法はまだ確立されたとは言えません。 顕微授精では真に良好な精子を選択しているのか、凍結技術の多用が真にARTの成績向上に寄与しているのかなど様々な問題が残されているように思われます。 また革新的な薬剤も多く発売されました。しかし39歳の生産率は10%(日本産婦人科学会の公式資料)のまま留まっています。この事実は、革新的な技術が必ずしも結果に直結しないことを意味しています。
科学(サイエンス)は自然そのものを対象としています。 過去のノーベル賞受賞者の言葉を引き出すまでもなく、そこでは、先入観のない目で事実を受け入れなければ僅かの真理にも到達できません。 科学の一分野である生命科学も同じで、探究のためには自然周期が全ての基本になります。しかし現状はあらゆる場面で人工的な刺激と抑制が介入し、ヒトの自然は分厚い薬剤の層に覆われてしまっているのです。 このような状況では新薬の開発が進歩を意味し、「知の地平を開く」という自然科学の進歩とは自ずと異なってくるのです。
私たちは自然周期を通じて生命発生の真理を探究し、それを患者様に還元するという一貫した姿勢を堅持して来ました。 そのために薬剤からの脱却を試み続けてきました。これは加藤修氏が創始し、寺元が引き継ぎ、そして未来へ伝えていきたいと願う当院の基本理念なのです。