

いくつかの不妊クリニックのホームページに「妊娠率」が掲載されています。
クリニックの妊娠率は高いほうが良いのは当然ですが、妊娠率の数値を他のクリニックと比べることは実は難しいのです。
正しく理解して、選択に役立てて下さい。
まず体外受精を考えてみましょう。
【妊娠率=妊娠した人/体外受精を受けた人】です。つまり、妊娠率は体外受精を受けた人のうち妊娠した人の割合です。
一見単純ですが、実は複雑です。その主な理由を説明します。体外受精では、①薬を注射し、②卵子を採取し、③良い胚が育ったら子宮に移植します。

この3つの段階のうち「どの段階まで進むことが出来た人」を、「体外受精を受けた人」として「母数」にするかにより、3つの異なる妊娠率があります。
3つの妊娠率のうち、3番目の良好胚が得られ移植ができた患者さんを母数にした場合に、妊娠率は最も高い値になります。

これは、良好胚に育たず妊娠のチャンスが得られなかった人が母数から除かれているためです。移植ができて妊娠のチャンスがあった条件のよい人の妊娠割合ですから、最も高くなるのです。表示されている妊娠率の多くは、この妊娠率(移植当たりの妊娠率といいます)です。
では、この移植当たりの妊娠率を、他のクリニックと比較する場合を考えてみましょう。妊娠率にもっとも大きな影響を与えるのは年齢です。
仮に、Aクリニックでは初めて体外受精を受ける患者さんが多く、平均年齢が若く、妊娠率も50%と高いとします。一方、Bクリニックには他そのクリニックで治療を受けたが妊娠できなかった患者さんが転院してきているとします。患者さんの平均年齢は高く、妊娠率が低くなります。さらに、妊娠しにくい人が集まっているので、妊娠率はさらに低下し仮に25%となったとします。妊娠率は50%と25%ですが、Bクリニックの治療がAクリニックより劣るといえるでしょうか?必ずしもそうとは言えません。受診している患者さんの年齢や不妊治療歴などの背景を考えに入れる必要があるのです。
このようにクリニック間で妊娠率を単純に数字で比較することは難しいのです。ここで説明した他にも、比較を難しくしている理由がいくつかあります。例えば、妊娠率を30歳から34歳の患者さんで計算した場合には、35歳から39歳の場合より高い妊娠率になります。さらに、妊娠率は、移植胚の選択基準や一度に移植する胚数などの影響を受けます。
妊娠率だけで判断するのではなく、提供されている情報を総合して判断することが大切です。