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不妊治療・体外受精の専門 | ナチュラルアートクリニック日本橋

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小卵胞からの採卵(小卵胞採卵)とはOOCYTE RETRIEVAL

1. 小卵胞採卵の始まり

以前は「小さな卵胞では卵子は成熟できない」と考えられていました。
しかし、当クリニックでは「小卵胞で卵子が成熟する」ことを見つけ、2016年に不妊治療・生殖医療分野の国際的学術誌である「Fertility and Sterility」に報告しました。
この結果、小卵胞から良好な成熟卵子が回収できることが明らかになり、現在当院では小卵胞(3〜10mm)からの採卵が行えるようになっています。
小卵胞からの採卵で生まれてきた児が健康に育っていることも確認し報告しました(Fertility and Sterility, 2019)。

2. 小卵胞と大卵胞(=主席卵胞)との違い

自然(薬を用いない)周期では、毎周期30個あまりの卵胞が育ち始め、5日目頃にそのうち1つが選ばれて、発育を続け14日目には2cmほどに育ちます(主席卵胞)。この主席卵胞は、その周期で最も良好な卵子を有していると考えられてきました。この主席卵胞が破裂してその中にある卵子が放出されます(排卵)。自然周期の体外授精では卵胞が破裂する前に、卵胞を穿刺して卵子(1つ)を回収して治療に用います。
一方、選ばれなかった(主席卵胞になれなかった)卵胞は発育を停止し、その中にある卵子は変性すると考えられてきました。そのため、小卵胞を穿刺しても、卵子は採れないあるいは採れても妊娠できないとされ、これまで採卵の対象外となっていました。

図1 自然周期(従来の理解)

3. 小卵胞採卵(主席卵胞と小卵胞の同時採卵)

これに対して、2016年の当クリニックの発表は、小卵胞のなかで良好卵子が育つというものです。そこで当クリニックでは、通常の採卵時に、小卵胞からの採卵もあわせて実施することにしました。
この治療では、主席卵胞と小卵胞の両方から卵子を回収しますので、複数の卵子が回収できることになります(3〜5個程度)。この同時採卵により妊娠した卵子の由来をみると、50%が主席卵胞から、残り50%が小卵胞からでした。つまり、主席卵胞のみから採卵する従来の自然周期では、本来の能力の半分しか生かせていなかったことになります。実際に、小卵胞採卵の併用により、自然周期の妊娠率は従来法のおよそ2倍に上昇しました。

図2 主卵胞・小卵胞採卵

4. 小卵胞採卵のメリット

小卵胞採卵は自然周期の新しい理解から始まった採卵ですが、現在では低刺激や中刺激周期にも応用しています。
●第一のメリットは、回収できる成熟卵子数が増える可能性があること。
●第二のメリットは、FSH量が少なくてすむことです。FSHが少ないと、身体への負担も少なく、費用も少なくなります。
したがって、FSH量を増やしても卵子数が増えないとき(AMH低値)や、年齢が高めのときは小卵胞採卵を検討してみると良いでしょう。

5. 小卵胞採卵のデメリット

デメリットとしては、高い採卵技術が必要な点です。短い時間で、3~10mmの卵胞を正確に穿刺して確実に卵子を吸引するには、医師の技術・精緻な穿刺針・採卵チームの連携が必要です。胚培養士の熟練したスキルも必須です。
穿刺にともなう卵巣出血などのトラブルは、過排卵刺激後の採卵に比べて、低くなります。FSH投与量が多いと卵胞が大きく腫れて血管も多くなるのに対し、FSH投与量が少ないと卵胞が小さく血管も少ないため穿刺回数が少なく出血リスクも低くなります(一度の卵巣穿刺により、複数の小卵胞から卵子を回収できます)。

6. 調節過排卵刺激との違い

体外受精では、周期5日までにFSH製剤の投与を開始します。このFSH製剤の働きにより、主席以外の卵胞も発育を続けることができ、多くの卵胞を2cmほどに育ててから採卵します。大きくなった複数の卵胞を穿刺して、多くの卵子を回収することを目指します。
しかしながら、卵巣が大きく腫れると、腹部の膨満感・腹水・尿量減少・胸水貯留などの症状が強くなることがあります(卵巣過剰刺激症候群、OHSS)。身体の負担が大きいため、採卵時には休業が必要となることもあります。また、連続した周期での採卵は困難です。

図2 調節過排卵

7. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)との違い

PCOSでは、多くの小型卵胞が見られます。これらは、発育が極端に遅いために小型のまま長く止まっている卵胞と考えられます。この卵胞は、自然周期の「小卵胞」とは異なるものと考えてください。
自然周期の「小卵胞」は毎周期新たに発育を始める卵胞であるのに対し、PCOSの小型卵胞はそれより前から発育を始めた卵胞で5mmほどに発育したところで発育がほぼ止まった状態になっています。長く止まった卵子の一部は、発育する力を失います。したがって、PCOSの小型卵胞は、ここまで説明してきた「小卵胞」とは異なる卵胞集団です。

PCOSのイメージ図